コロナ自粛要請の下でのリアル見本市では

20210225東京パック1

20210225東京パック2

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想定していた以上に状況は悪化していました。

 昨年1月から始まったコロナ禍により日本国中、いや、世界中で感染者が増大し、毎日のように死亡者数が発表されています。感染者数、死亡者数の伸びは一段落したようですが、感染力の強い新型コロナウイルスが発生し、コロナ禍が何時収束するか全く予想が立ちません。
 さて、私は昨年2月にさいたま市で開催された「彩の国ビジネスアリーナ」に出掛けてからはリアルの見本市に出かけていません。つまり、この1年間は首都圏にある見本市会場には出かけていないことになります。昨年は4月から第1回目の自粛要請があり、人が密集するイベントやコンサートなどは自粛され、見本市もその一環により休止されました。5月、6月は飲食店が休業し、不要不急の外出を避けることになりました。そのため、感染者数が減少したため自粛規制が解除され、7月の下旬からは見本市も再開されるようになりました。9月になって見本市の再開は本格的になり、開催された見本市も増えてきました。
 年が明けて1月になると、気の弛みのせいか外出する人数が増加したため、コロナの感染者数が極度に増加しました。このため、政府は1月8日から2月7日の間を第2次自粛規制とし、飲食店の営業短縮を要請することになりました。しかし、それでも感染者数が減らないため、3月7日まで延長することになり、首都圏は本日も解除されていません。このように、コロナ騒動は続いているのですが、東京ビッグサイトや幕張メッセなどでは見本市、展示会の開催が続いています。
 私はコロナに感染するのが怖く、見本市会場には足が遠のいていました。このため、最近のリアルの見本市がどのようになっているのか全く判りませんでした。知人が2月25日に開催された東京国際包装展(別名、東京パック)に出かけ、会場の状況を撮影してきてくれました。それらの写真と複数の知人からの話を総合して、コロナ禍のリアルの見本市を考察することにしました。
 1段目の写真は西館の1階で、会場へ入場口です。通常ならば、カウンターで招待券や名刺を提出して入場ホルダーを受け取る来場者で混乱しているはずですが、行列は全く見かけられません。本来なら、1階のホールにはステージが設営され、セミナーが開催される筈だったのですが。申し訳程度に机と椅子が並べられていました。
 2段目の写真は、西館、南館における出展者のブースの位置を説明した会場案内図です。案内図では、会場のスペースのほぼ全てがブースで埋めつくされていることになっているのですが。
 そして、3段目の写真は南館を上方から見たものです。出展者のブースは少なく、通路の幅が極めて広く設定されています。床に白い白線が敷かれた場所は開催日の前日にブースの区画割りが設定されたのでしょう。その位置の出展予約者が開催前日まで出展するかどうか迷っていたのですが、前日になってドタキャンしたものと思われます。また、白線が敷かれていないが空いているスペースは、それよりももっと前にキャンセルしたのでしょう。いずれにせよ、予約はしたが、その後になってコロナの感染が続いているのでキャンセルした出展者が多かったようです。また、来場者も少なく、あちこちにパラパラと見かけられる程度でした。通常であれば、3日間の開催で2万人以上は来場される、と言われているのですが、今回は5千人以下でしょう。
 〔リアルの見本市の状況が伝えられていない〕
 東京パックの見本市会場はこのように閑散としていて、全く活気がありませでした。他の見本市でも同じようなことではないかと推測されます。しかし、コロナ禍で開催されている見本市の会場内風景がネットで公開されることはありません。主催者としては来場者が減少して寂しくなった会場の様子を知られたくないので、ネットで公表することはないでしょう。しかし、コロナ禍で経営が困難になっているのは飲食店ばかりではありません。見本市を設営することで経営が成り立っているイベント会社も大変なのです。イベント会社はこんなに苦しい、と自ら会場風景をネットに上げて、報告して頂けないでしょうか。多分、賛同される企業も多いと思います。
 〔来場者が少ない理由〕
 では、リアルの見本市がこんなに不調となっている理由は単純で、「社員がコロナに感染して欲しくない」ということでしょう。出展者からすれば、会社からブースに派遣した社員が感染したなら、労働問題となってしまうでしょう。また、来場者にとっても会場に出かけて感染し、会社に戻ってきて社内でコロナを広げたのでは本末転倒というより、企業の運営に関わる大問題となります。
 さて、会場でブースを設営していた人からの話では、来場者の殆どは東京、千葉、埼玉、神奈川の首都圏の企業ばかりで、地方都市からの来場者は見かけなかった、と聞きました。つまり、都心に近い場所から見本市に出かけた人はいたのですが、遠方からの来場者はいなかったのです。地方都市からの来場が避けられたのは2つの理由があります。一つは、飛行機、新幹線などの密閉された交通機関に乗車することで、移動中に感染する恐れがあるからです。二つ目は、都心から地方にコロナを伝搬させる恐れがあるからです。地方都市によっては未だコロナによる感染者数が少ない都市もあります。そこに、見本市に出かけて感染した患者が原因となって、その地方都市でバンデミックとなったらどうなるでしょうか。地方では地域が狭いため、感染源が直ぐに知られてしまいます。地方都市にある企業にとっては信用問題となって、まごまごすると休業させられるかもしれません。日本海側の地方都市でコロナ感染者となった人の氏名は、口コミで直ぐに町内に知られてしましました。このため、その人の家庭は地元には住めなくなり、夜逃げ同然で町から出ていかざるを得なかった、と聞きました。
 そんな恐れがあるため、地方都市の企業では、都心の見本市に社員を向けることができません。地方の企業はひたすら、コロナ禍が過ぎ去ってくれるのを待つのみです。また、都会にある企業の営業員が地方にある企業を訪問し、営業に出かけようとしても同じなのです。営業員がアポイントを取るためために地方の企業に電話すると、「都会からは来社して欲しくない」と断られるようです。見本市とは逆に、他社の社員が地方の企業にコロナを拡散されては困るからです。見本市では商談できず、顧客に営業しようとしても断られる、という最悪の状況が現在なのです。
 この結果、メーカーとしては新製品や新企画品を広めようとしても、見本市会場では広めることができず、訪問営業もできません。片や購買する需要家にとって新製品などの情報が入らず、仕入れしたい商品を入手できない、という相反する結果となっています。このままでは新製品が市場に流通しなくなり、景気が回復しません。政府は助成金や休業保証料を給付していますが、商品の流通には金銭的な問題の解決では解消しないでしょう。
 〔リアルの見本市による絶対効果〕
 リアルの見本市が不調であるため、ネットによるバーチャルの見本市も開催されてます。しかし、モニターを介したネットによる見本市では全く反応が違います。リアルの見本市ではモニターの画面からは入手できない微妙な業界の情報を入手することができます。ウエブ見本市ではこの効果が見込めません。一番の問題は、リアルの見本市では偶然の出会いを期待することができることです。日頃は接触することができない人物に出会えたり、異業種の人から何らかのヒントを耳にすることができます。このような成果はウエブではあり得ません。リアルの見本市が早く回復することを期待してます。
 〔コロナ収束後の見本市〕
 コロナ騒ぎが終わった後では、リアルの見本市はどうなるでしょうか。私は以前に比べて見本市の数や種類が増えるのではないかと予想しています。それはリモートワークにより従来とは違った働き方があり、働く人が地方に分散するからです。すると、地方の人は新たな情報を必要とするはずで、そのため見本市が情報の交流点として活用される可能性が高くなるからです。社会構造が変わってくるため、見本市も大きく変わるのではないでしょうか。
2021年3月2日