特別室は日本では見ることのできないような超高級品である。
香港の宝飾展示会の会場の特徴は、カテゴリーによって展示室が分かれていることである。これは敷地が狭いという香港独特の制限から、東京ビッグサイトのように横に長い平坦な会場構成ができず、複数の展示室に設備が分散されていることから発生したようだ。このため、東京の展示会のように、水平に広い会場を細かくブースで区切ることができず、見学しようとするアイテムに合わせて部屋を探さなければならない。細い通路をうろうろと歩いて目的とする展示物のある部屋まで移動することになるが、そもそもこの展示会場が迷路のように設計されているので、目的とする部屋にたどり着くのが大変であった。しかし、日本のように大部屋でノッペリとした展示ではなく、カテゴリー別に部屋が区別されているので、例えば真珠が目的であれば真珠の展示室、翡翠が目的であれば翡翠の展示室、というようにその部屋だけで目的を達成できるので便利ではある。
展示会場では大きく分けて6つのカテゴリーの部屋があり、その他に細かな商談室や廊下にまでブースが設営されている。複数に分けられた展示室の中での目玉は『特別室』であろう。ここは世界でもトップの宝石業者がブースを借り、高額な商品(宝石、宝飾加工品)を展示していた。他のカテゴリーの展示室はパネルで区切っただけのブースであるが、ここではブースそのものを小屋のように独立した部屋で区切ってあり、ブースも豪華であった。
展示してある商品は日本の宝飾展では絶対に見ることのできないような高品質、超高額のものばかりであった。私の印象に残ったダイヤモンドでは、Dカラー、IFクラス、10キャラットのものであった。卸売価格で1億円近いものであった。この他にも5キャラットのピジョンブラッドのビルマルビー、30キャラットのエメラルドなども見かけられた。これらの宝飾品は各国から来場したバイヤーによって買い取られ、地元の顧客に転売されていくのであろう。これだけの宝飾品が売られていくのであるから、世界のどこかにはこのような高額品(多分、銀座のミキモト、タザキ、和光などでも売っていないような超高価格のもの)を購入できるウルトラ金持ちがいるのだろう。
出展している業者に、『日本に進出する予定はあるか。』と尋ねたところ、『我々はニューヨークと香港だけをマーケットと考えている。日本には進出する気はない。』と言われた。日本は数千万円、数億円もするような宝飾品を購入できるような人種は薄く、彼らにとっては商売にはならないと判断されているようだ。なお、各ブースの業者はティファニーやカルチェのような有名ブランドの会社ではない。小さな無名のブローカーであるが、彼らのネットワークで珍しい宝飾品や高額の宝石が流通されているのである。
写真は『特別室』の通路を撮影したものである。本当は写真撮影は禁止されているのだが、黙って写してきた。バイヤーがショーケースの中に気に入った宝飾品を見つけたら、ブースの中に入って商談することになる。この部屋の中の宝石は日本では見ることができないようなものばかりで、一日いても飽きることはない。同時に、余りにも現実離れした金額なので、ガッカリすることは確かである。
2005年9月27日