国際福祉機器展に行ってきました。

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アジアで最大の福祉関係の見本市です。
福祉の分野では日本は先進国です。


 老人や障害者の介護や生活維持のための道具、装置などの商品を展示した「国際福祉機器展」に出掛けてきました。この見本市の歴史は古く今年で33回になり、毎年のように規模が拡大していきます。介護用品が主な出品物であることから、その介護用品を必要とする老人や障害者が訪れていて、会場内には車椅子での来場者の姿が目立っています。しかし、主流の来場者は介護施設や老人用ケアホームの従業員や、大学の福祉学部の学生が殆どです。新型の介護用品や使いやすい介護用品を求めて、会場内を熱心に回っているのが見かけられました。
 さて、この国際福祉機器展では、数年前の介護保険が開始されたときには大変な騒ぎでした。介護保険では、要介護に認定された老人が介護用品を購入する際に保険から助成金が支払われます。これを商機と感じた全国の中小企業では、新型の介護用品の試作と製造に乗り出したのです。介護保険が始まった翌年のこの見本市では、車椅子を出品していた業者が三十数社、便器付き椅子を出品していた業者が三十社以上、介護用ベッドを出品していた業者が二十社以上ありました。車椅子、椅子、ベッドのいずれも鉄工所のような中小企業でも手を出しやすい商品であり、多少の工夫をしたような似たような商品ばかりが会場に並べられていました。中小企業でも簡単に参入できる、と判断したのではなかったかと思われます。誰でも簡単に思いつくような商品であっては競争が激しくて、実際のマーケットでは売れません。また、その当時は地方公共団体が地場の中小企業の育成のため、介護用品の開発や販売に補助金を出していたため、安易に商品開発をして出品していたのではなかったかと推測されます。それまで家具やドアーなどを製造していた地方の中小企業が、便器付き椅子を製造したとしても売れる訳がありません。すでに介護用品の業界には同じような商品を製造、販売している業者がいて、販売ルートを押さえているのです。また、介護用品のマーケットは狭いのであり、新規に参入しても多くは売れません。安易な商品開発とマーケットを見誤ったので、大赤字となって泣いた中小企業の社長も多かったのではないでしょうか。
 今年の国際福祉機器展では、今までとは会場内の雰囲気が全く違っていました。大企業の出店が目立つことで、福祉機器の分野にも大企業が本腰を入れて参入してきた現れでしょう。大企業であっては資本が多いだけに、研究も熱心であり、製品自体の完成度が高いものでした。このため、今までのように思いつきのような介護用品を出品していた新参の中小企業は淘汰されて、会場からは消えていました。また、今回出店していた中小企業では、特定の分野にだけに特化して、大企業では製造できないような細かな商品だけを製造している企業が目立ちました。このような中小企業では、介護の現場で必要とする便利な商品を開発していて、それなりに存在感がありました。つまり、福祉機器の業界では、もう素人のような中小企業は参入が困難になってきたのです。数年前の同じ会場で見た、車椅子の製造に新規参入していた中小企業は消散して影も形も見られませんでした。私は、この傾向はいいことだと思います。「皆が行動しているから、わが社も同じ方向で商品開発をする」という安易な発想では中小企業は生き残れません。十分に研究して、他の中小企業では製造できない発想の商品を開発すべきではないでしょうか。
 二段目の写真は電動ベッドで、老人介護のための必需品ですが、高級品は外国製が並べられ、中級品以下では大手ベッドメーカーの出店が目立ちます。耐久性や保証の問題があるため、木工をしているだけの中小企業では参入が難しいでしょう。
 三段目の写真は車椅子を載せることができる自動車の展示風景です。このような介護用の自動車では、トヨタ、日産、ホンダ、スズキなどの大手自動車メーカーが直接進出していました。数年前では、改造車を製造する町の小さな中小企業の出店も見かけられました。その頃は、このような車椅子を搭載する改造車のマーケットが小さかったからでしょう。しかし、このように自動車のメーカーが見本市に出店してきているのは、マーケットが広がったことと、大企業も改造車の販売を一つの事業部門にして参入してきているからでしょう。
2006年9月30日