葬儀社への新しい提案なのですが、商品を売ることが必須なのです。
都内、某所で開催された「互感フューネラル」という極めて小さな見本市を見学してきました。「互感」とは五感に引っかけた造語のようで、触覚、視覚、感覚などの感性を新しくした葬儀を提案しようというのが目的のようです。主催したのはローソク会社、コンサルタント会社、デザイン会社であり、新感覚の葬儀をプロデュースしようというもののようです。
この見本市の内容では、葬儀に関連する商品のメーカー、サービス会社を集め、葬祭商品とサービスを組み合わせた進歩的なデザインの葬祭ビジネスを提案していました。要するに、今まである葬儀に関する商品やサービスにデザイン会社やコンサルタント会社が多少の手直しをして、リフレッシュした形で葬儀社に採用してもらおうというのが目的のようです。
二段目の写真では、無宗教的なデザインの祭壇であり、カーテンとローソクで葬儀を厳かに演出しようというものです。三段目の写真は、モダンな葬儀を提案しようとするものです。参拝者の席の前には組立式の家具で祭壇を造り、簡素な祭壇に遺影を置いてあります。参拝者の席の傍らに柩を置き、柩には葬儀用の布が被せてありました。このような配置の葬儀がこれから実施されるのではないか、という一つの例でした。
感覚的にはモダンで、今までにはなかったスタイルの葬儀を提案していて、もしかするとこれからはこのような葬儀があってもおかしくはないでしょう。しかし、ここで新しいスタイルの葬儀として提案されている事例で使われている商品は、全て既に関連企業が製造している商品であり、この例示された葬儀ではそれらの既製品を組み合わせただけなのです。「既にある商品を組み合わせるにはデザイン力が必要なのである」と言われればそれまでなのですが、もう少し工夫が必要かもしれません。主催者であるデザイン会社としては葬儀場の設計の仕事が欲しいのであり、コンサルタント会社からすれば顧客となってくれる葬儀社が必要なのであり、ローソク会社としては自社のローソクを沢山売りたいのが本音なのです。しかし、この会場で提案されているチョッピリ新しいデザインの葬儀が面白い、と感じた葬儀社がいればそれでいいのです。葬儀社は新しい葬儀を喪主に勧め、モダンな葬儀を執り行うことで業績を上げることができます。葬儀のデザインが売れれば、この主催者と葬儀社の何れも商売として成り立つからです。
2015年5月31日